“ 藤野千夜さん ”

 2015-12-21
『ツインズ』が期待外れで気分が盛り上がらないのと、歳暮で仕事も忙しく、他のブログは書けても、“カンパイ!”は長く未更新で毎日覗いてくれる方に申し訳ない気持ちです。

でも、多部ちゃんの演技は相変わらずすばらしいですから、それだけでも観る価値はあると思います。


今日は朝日の書評欄に載っていた作家、藤野千夜さんに触発されて書きたくなりました。

多部ちゃんファンなら藤野さんはわかりますよね。


多部ちゃんの小説映像化作品の中でも、恩田陸さんの『夜のピクニック』、角田光代さんの『対岸の彼女』と並んで印象に残る作品『ルート225』の原作者です。

私はこの三つの作品はリアルタイムではなく、『やまたろ』で多部ちゃんを知ってから観ています。


そして、私の好きな順は、『ルート』、『対岸』、『夜ピク』です。


『ルート』(2006年)の田中エリ子役の多部ちゃんは、中村義洋監督をして天才と言わしめた、演技とも素とも判断しがたいようなノビノビとした魅力を発散しています。

天才という表現は、図らずも現在『ツインズ』で共演しているりょうさんも多部ちゃんについてインタビューで語っていますw


いずれにしても、現在の多部ちゃんに繋がる見事な演技は何回観ても飽きることがないです。


で、今回この記事を書こうと思ったキッカケは、「D菩薩峠漫研夏合宿」という作品で、初めて自伝的小説を書いたという内容についてです。

藤野さんは性同一障害で幼いころから悩んでいたそうで、小説家になってからも、出身校は男子校の麻布学園だとは明かさず、フェリス女学院だと言い張っていたそうです。


それを読んで、『ルート』の解釈に新たな側面があるのかなって思ったからです。

少女から大人の女性への脱皮というような解釈が一般的だと思いますが、パラレルワールドの着想は周りとは違う性的な悩みを抱えていることもあったのかなと思いました。


今までも一番たくさんの回数観てる作品ですが、そんな解釈も含め奔放なエリ子をまた観てみたいと思います。





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「ルート225」

 2009-02-25
だいぶ前に書いて、妄想記事に先送りされて塩漬けになっていた記事です(笑


藤野千夜さんの「ルート225」を読みました。

ストーリーの大きな流れは映画とほぼ同じで、軽い若者言葉を多用して面白く読めましたが、映画とどちらが好きかと言えば、映画の方がイイですね。

それは、原作では饒舌になり過ぎるタメぐちの会話やエンディングに向けてのストーリーを、映画では余分なものをそぎ落としてスッキリと描いていることにつきます。

私はとにかくくどい、過剰といったことがキライなんで、どうしても書き込み過ぎてしまう小説より、枝葉をばっさりそぎ落し、狙いを絞り込んだ映画のほうを好むことのほうが多いのですが、まあそれは作品にもよりますね。

中村監督の演出は原作の流れを忠実にたどりつつも、印象的な映像をうまく挟み込み、それをリフレインすることによって心地よい既視感を与え、エンディングに向けての落としどころを巧みに描いてスッキリとまとまった良い作品になっていると思います。

よく話題になるエンディングについては、あれが最良ではないでしょうか。

もし、母親が戻ってきてしまったら、特に深く考えさせることのない、単なるお子様向けのファンタジー映画になってしまい、原作の持っている子供から大人への不安定な心のゆらぎは半減してしまいますし、つらい体験を経て、小樽での15歳になったエリ子のあっけらかんとした明るさこそが、この映画のキモではないかと思います。

この話しのような時空が歪んでしまう不可思議な物語は、よく映画や小説でもちいられますが、話しが事件とか特殊なことにつながることなく、ただ親がいなくなってしまうという日常の喪失感のみに終始して、ひたすらエリ子とダイゴの内面に迫っているところがユニークでいいと思います。

演出は、エリ子とダイゴのかけ合いを巧みに描いて、微妙な兄弟の力関係の描写をベースとして描くことにより、弱者のダイゴの一貫した現実的、悲観的な視点と対比する存在として、エリ子の心のゆらぎとそれを見せまいとする強気な態度がシンボリックに魅力的に描かれており、多部未華子を得たことによる作品の成果が見事にあらわれていると思います。

この作品からうける最大のポイントはそこに帰結しており、ダイゴも両親もマッチョも、すべて多部未華子を引き立たせるための役割という感じがします。

多部ちゃん自身が、エリ子は私に近い部分があると言ってるように、生活態度、日常の姿がイキイキと描かれていて、そのふつうの日常があるが故に、ねじれてしまったもうひとつの“ダッシュの世界”の静かな異常が、ひたひたと見るものに迫ってくるところが秀逸だと思います。

私たちも、ふだんなにげなく自分が間がさして、おかしな行動をしたりすることもありますし、また人から突然あり得ないようなことをされたりすることもあり、想像したことのないような“ダッシュの世界”にまぎれ込むことが絶対にないとは言えませんね。

この作品は、多部未華子の「HINOKIO」から、「夜のピクニック」へとつながる初期の代表作の中でも、ひときわ彼女ののびのびとした演技の特異性と将来への大きな可能性があらわれており、多部史上に燦然と輝く名作であると思います。

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