「夜ピク」

 2008-11-28
ちょっと前に、「夜のピクニック」の原作を読み終わった。

みなさんご存じの恩田陸の本屋大賞第二回受賞作品ですね。
私は、あまりあたらしめの小説は読まないので、今年ドラマが終わって読んだ「鹿男あをによし」以来で、「夜ピク」を読むまでの間は、ドストエフを読んでいました。

映画を見ているからスジはわかってしまっているし、言葉もいまの言葉づかいだからわかりやす過ぎるくらいにスンナリであるが、最近は地下鉄の短い乗車時間くらいしか小説を読まないので結構時間をかけて読んだ。

私は、原作がある映画の場合、原作と映画はまったく別物でよい、あるいはそうあるべきだという考え方なので、映画の内容と本と違うとか、どちらがいいとかいうことは考えません。

この秋ドラマ化されて、なかなか良い出来の「流星の絆」も東野圭吾の原作を宮藤官九郎がズタズタにして、感覚の異なる作品にしていると書いてあるのを読みましたが、それが映像化の面白さだと思います。

来年3月に公開される多部ちゃんが出演している「フィッシュストーリー」も伊坂幸太郎の五つの時代にまたがる複雑なストーリーをうまくまとめてあると大森南朋さんが言ってしましたし、多部ちゃんも最後にスッキリ、スッキリする作品ですよと言っていました。小説とはちょっと違うようですね。

もちろん、原作と映画のどちらが好きかということはありますが、どちらが良いとかいうような基準で判断をくだすようなものではないと思っています。

ただ、かつて映画化された小説をあとで読みたいと思ったことがなかったので、多部ちゃんの出た作品を読んでみて思うのですが、私みたいな映画好きはあとで原作を読むほうがいいのかな、ということです。

先に本を読んでると話しはわかってしまっているし、本との違いが気になったり、もの足りなかったりと、余計なことを考えそうで・・・、
本の好きな方は、もちろん映画より本が先のがいいでしょうね。

言葉で書くということは、情景や心理描写まで、微に入り細に入り、作家がここまでは書きたいと思うことは原稿の枚数を気にすることなく、存分に書くことができるのに対して、映画は予算や時間の制約が大前提にあり、テーマを絞り込んだ上で脚本を書き、心理描写にいたっては言葉で表現することは稚拙で、それをいかに映像表現や役者の演技であらわすのかというところに醍醐味があるという大きな違いが存在しています。

ですから、本で読むと丁寧なほどにわかりやすく貴子の過去からの思いや今の心情、友達のさまざまな思いを、行きつ戻りつしながら巧みに書いてありますが、映画はむしろ細部は語りすぎない、言いたいことを絞り込み、そぎ落とすことによって見る人自身が考え、想いを共有することができるような作業が必要だと思います。

そういう点で、長澤監督の作品はストーリーも貴子の表情にもあまり抑揚のない原作を前にして、枝葉末節をカットするとともに、心理描写にアニメを挿入するなど、苦労がしのばれる作品に仕上げられています。

少なくとも、原作に通低する“青春のゆらぎ”をロードムービーとして的確に描いた佳作ではないでしょうか。

貴子の演出、見せ方についてはいろいろな意見があるようですが、私は悪くないと思います。

主役として過不足なく描かれていると思いますし、事件もなにも起こらない静かなストーリーの抑えた表現の中にこそ多部未華子の演技の本質があらわれていますし、抑揚を抑えた演出が徐々に大団円に向かっていくところなどうまく描かれていると思います。

貴子が主役ではありますが、青春の群像劇というか、友人それぞれの出来事、立ち位置があってこその貴子の今という部分が重要ですから、そういう観点では合格点ではないでしょうか、

映画の出来もさることながら、多部わずらいの身としては、彼女の“これ”という表現がどれだけ描かれているかという点も重要で、その点では数多くの好ポイントがあったと思います。

例えば、葬式の母の後ろからこわごわと融を見る顔、学校の下駄箱の前で融と遭遇してしまい、思わずニラんでしまう顔、美和子と教室で仮眠をとるときのうつろな顔、融と話すことができた時のホッとしつつもさわやかな笑顔など、たんたんとストイックに描かれた作品の中での彼女の一瞬の輝きにハッとさせられます。

と、ここで終わる予定だったのですが、今週の週刊文春の原色美女図鑑に多部ちゃんが取り上げられ、ステキな写真とともにインタビューが載っていたので、ちょっと触れてみたくなりました。

記者は、多部ちゃんはすごく目立つわけではないのに、どんな役を演じてもなぜか印象に残る。その独特の存在感は天性の女優を思わせるが、「自分が女優になるなんて考えたことなかった」といつもの彼女の発言を載せ、「あまり夢見るタイプじゃなくて、幼稚園で将来はケーキ屋さんになりたいっていう子がいると、毎日食べたら飽きちゃうよ、とか思っていた」とか、女優としての目標は、「将来どうなりたいというより手に職があって食べていければいいと思っています」と、NHK朝ドラ「つばさ」の主役という大役を前にたんたんと語る彼女に不思議なイメージを抱いています。

まるで、OLがパソコンや簿記の検定でも取るかのような感じで女優業について語るのは、俳優は人々に夢をうる特別な仕事、アーティストと思っているような人や業界人から見たら、ヒンシュクものの発言とも言われかねませんね。

でもそこが多部ちゃんの無防備さの真骨頂で、「つばさ」も今月初めにクランクインして、順調に川越ロケも一段落し、来月からNHKスタジオでの収録に入るという今、そろそろ多部ちゃんも周りに配慮した大人の発言ばかりになるのかなって思っていたので、どこまでいっても確信的で本質は変わらないのが、個人的にはうれしいのであります(笑


☆今日のお気に入りの1枚
 CHRISETTE  MICHELE   “CHRISETTE  MICHELE”    
 ジャズが根底にある開放的なソウルシンガーソングライター、07年デビューではピカイチの存在!
  
  

  “BEST OF ME”
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