期待高まる誰も見たことのない『サロメ』

 2012-05-27
Deep Purplinです。

すでに皆さんご存知のように、本日(5/26)の舞台稽古見学会は中止になり、照明リハーサルの見学会になりました。

本番のセットを組んだ舞台で、照明の色や当て方をああでもない、こうでもないというリハーサルを宮本さんの解説も少しつけて30分強、そのあと美術の伊藤雅子さんのお話が30分ほどで16時45分頃にお開きになりましたが、セットのミニチュアを前にして、伊藤さんがフランクにお話をしてくれて、最後はつばさファンクラブでお馴染みの電波の武者さんと、成河さんを目当てで7回公演を観るという女性と3人で、伊藤さんから更にいろいろと裏話も伺い、気づいたら18時、さらに小1時間ほど3人で立ち話をしてました。

遠路はるばるのrakuyouさんはどの方かなぁとキョロキョロしてましたが、わかりませんでした。routeさんやtdoiさんがいないのは中止の情報をどこかで手に入れたのかなぁなどと思っていましたが、routeさんは遅れての入場だったようですね。

私自身、サロメ計画の観劇に行く前には絶対に終わらせないといけない仕事があって、一日でも早く余裕をもって終わらせたいのですが、思ったスケジュールより遅れているので、今回の件を責めることを書くと、気分的にはそれが自分に跳ね返ってきそうなので、あまり否定的にとらえないように考えていますが、遠くから来られた方には本当にお気の毒でした。(受付横で紙コップにお茶が振舞われていたり、対応がやたら丁寧だなとは思ったんですよね。)


さて、多部ちゃんを見ることはかないませんでしたが、いろいろと知ることができたこともありました。

まず、朗報としては、最前列となる第10列は多部ちゃんの芝居を観るには絶好のポジションです。多部ちゃんと成河さんのからみの芝居は、最前列のホントに目の前で展開します。真ん中や左手側(番号の若い側)のほうでの見せ場が多いので、右手側でも演じるように昨日も芝居を変更していたとのことです。(ただし舞台上の芝居で右手側からだと多部ちゃんが見えにくいものが一部あるらしいです。)

誰も見たことのないサロメを見ていただくと宮本さんが言っていますが、「エッ、そうするの?」と驚かされたところがありました。やっぱり多部ちゃんは、そういうチャレンジをしたいつくり手が使いたい役者だということですね。

以下、稽古場の映像で一部は映っている部分もありますが、ネタバレ的なことも含んだことを書きますので、舞台を観て驚きたい方は、お読みにならないことをお薦めします。

しかし、平野版の『サロメ』に宮本さんが、「今回の『サロメ』の上演は、観客のことはさしおいて、まず自分にとっての価値の変革と、それを再構築することが目的となりました」と書いていますが、説明をされないと、何を表現したいのか演出の意図がわからずに面喰うだけになりそうな奇抜なところがあるので、1回しか観ない方は、観る前に少し頭に入れておいてもいいかもしれません。平野版『サロメ』を読んでも、ここまでのことはイメージできませんので。







以下、書いても大丈夫と思われる範囲で。(宮本さんが、あんまり書いてほしくないということを言った部分にギリギリ近いことをほんのちょこっとだけ書いてますけどね。)

まず驚いたことは、セットと衣装は完全に現代劇です。NABEさんがアップされたBoot!や昨日のスタジオパークで映った稽古場の椅子などのセットが現代風だったことはお気づきだと思いますが、まさにああいう椅子です(稽古場のは安物やパイプ椅子も使われますが)。

だからサロメ姫もテディベアを持っているんですね。今日の舞台にも置いてありました。

イメージとしては、現代のドバイの金持ちの豪邸みたいな感じということで、ギャラリーのように真っ白が基調で、床もいろいろな椅子も、絨毯もみな白、白、白で、とても無機質な感じです。

衣装が山本耀司さんの既製服を使うということも既に知られていることですが、全体的に真っ黒のスタイリッシュな現代風の衣装だそうです(背広に近い服の人もいるらしい)。伊藤さんが着ていた黒のお召し物もYohji Yamamotoだそうで、なるほどこんなイメージなのかなと。ただし、時代を感じさせる模様をちょっと入れたりということはあるらしいです。

セットも衣装も現代風という設定は、好みや評価が分かれるところかもしれません。台詞の中には、古代を想起せざるを得ない単語があるわけで、現実にそういう芝居がどう見えるのか、頭の中はまだ整理できていません。そこらへんの感覚のミスマッチによって、何かを感じさせたり、考えさせたりということなんでしょう。

宮本さんが、美術の伊藤さんに最初に出した3つの注文というのが
 ・昔っぽくしたくない
 ・2階から降りてくる
 ・ヨカナーンはずっと下にいる
だったそうです。

それで伊藤さんがかなり凝ったものを提案したら、「やりすぎ」ということで却下が続いて、最終的にはかなりシンプルなものになって現在のものに至ったそうです。(途中段階ものは、舞台自体が傾斜していたりと、ある種の不安定さを示す斜めの構造が、それも対をなすかたちで含まれているものが多かったのですが、最終版はスクエアなものになっています。)

月の姿が会話の中でもいろいろと詩的に表現されていて、重要な意味をもっているため、月が舞台の奥にあるセットだったのが、どうしても芝居が客から遠くなりがちなので、客席側にあるという設定になっているそうです。

そのかわりにというかたちで、舞台の上には斜めに大きな鏡が吊ってあります。ただし、そこに映る姿が格段意味をもつということではないそうです。この鏡があるため照明も真上からは照らせないため、いろいろと難しい面もあるらしいですが、見えている姿と鏡に映る姿の二面性とかいったものを象徴的に示すようなオブジェクトなんでしょうね。。

稽古場では左手が少し開いた黒のレースのカーテンが映っていましたが、本番の舞台ではアクリルか何にかの半透明の壁になり、その向こうに宴の会食が終わった長机(18人座っている)があって、客席からは影でしか演技が見えないようになります。

ただし、そちらのスペースを撮るカメラがあり、壁の向こうの演技は、舞台右手側のテレビモニターにはクッキリ映し出されるようになります。このモニターは裏側から見るとステンレス製の食器棚みないな感じで、最初は、場にそぐわないものがあるなとしか見えませんでしたが、無機的な現代風の部屋という設定が呑み込めてみれば、この金属光沢の箱型のモニターが、真っ白な部屋な単調さに変化を与える存在になっているのだと納得しました。

サロメ計画は右手側からの観劇になりますが、このモニターが舞台を観るのに邪魔にならないかちょっと気になりました(見切りの位置は一応計算していて、手前の舞台の演技がメインになってからは後ろに動かすとのことでしたが)。ただしサロメとヨカナーンの絡みの芝居は客席の直前ですから、それについては心配ありません。

ヘロディアがしきりにヘロデにサロメを見るなと言うことに代表されるように、『サロメ』というのは視線の演劇なのだそうで、このモニターは監視カメラのようなものをイメージしていて、見たい人と見られたくない人という関係を想起させたいらしいです。

全体として宮本さんは、ワイルドの諷刺的な意識を前面に押し出したいようで、それを現代のお金持ちのイメージとしてセットを真っ白な部屋にし、そこがどんどん血で赤く染まっていくという演出で表現するようです。

政治や論理の世界を表す無機的な白の部屋や大人たちと、何にも染まっていなくて、ただ一人「生」の人間として生きているサロメを対比したいという意図だそうです。

ヨカナーンはさらにサロメとは正反対のイメージの存在だそうです。真っ白な部屋をパイプで支えている下のスペースが牢獄で、そこから声を出すようです。舞台が2メートル60だか70上げてあり、成河さんはその分だけ低い奈落にいるわけですが、少なくとも胸から上は、客席のどの席からも見えるはずだそうです。(彼の身長が168センチで低めなので、ギリギリらしいです。)

その奈落の床には5センチほど水が張ってあって、昔はプールとして使われていたという設定だそうです。(この水が下に漏れないようにするために、舞台設営を慎重にやらざるを得ず、照明のリハーサルが午後にずれ込んで、舞台稽古の見学会は間に合わなくなってしまたそうです。)

スタジオパークで紹介された映像で多部ちゃんが下を覗き込むようにしたあと、寝そべりますが、あれが水の張ってある奈落を見るという感じの演技になります。

奈落から客席側へ、プールサイドをイメージするようなかなり急な階段があり、一番上の幅70センチほどの段のところでサロメとヨカナーンが演技をします。Boot!の稽古場の映像で舞台右手から多部ちゃんが木製の梯子のようなところから登ってきたという感じで出てきますが、これが地下の水を張ったスペースに降りる梯子で、本番の舞台では金属製です。

サロメはこの梯子を降り、水のたまっているスペースを歩き、ヨカナーンとともに階段を登って手前で芝居をしますが、昨日の稽古でも、水のたまっているスペースで「キャッ」と声を上げて滑っていたそうで、そのあたり、滑らないように工夫も必要かもとのことでした。

この階段は段差が45センチほどあるので、多部ちゃんには結構キツい設計で、よじ登ってもいいということになっているそうです。

注目のサロメダンスですが、脱いでいったり妖艶なものであったりしないことはもう知られていますが、舞台が滑りやすいらしく、残念ながら多部ちゃんのダンスの能力を最大限に発揮するものではないらしいです。

月を舞台からなくしたのは、月よりも血が大事な意味をもつということもあるそうで、最後に舞台を染める血が、サロメが初潮を迎えて少女から大人になることを表現しているとのことでした。このあたりが宮本サロメの基調ですね。

そういう話を聞いて、チラシの赤が滴っているデザインが壁を流れる血であることに気づきました。血の見せ方は、照明の助けも借りつつ、効果的なものをまだ実験模索中の部分もあるそうです。

本番のセットを組んでの中劇場での舞台稽古は昨日から始まったそうで、芝居のやりやすさ、観客からの見え方や効果、毎日の舞台の維持など、本番に向けて修正がこれから入っていくようですが、新国立劇場は本番の舞台で1週間の時間がとれるので余裕があるほうらしいです。

多部ちゃんもこの2、3日で演技での顔つきが変わってきて、多部サロメをつかんできているそうです。

私自身は、舞台稽古を観るのはそうそうあることではないので期待をしていた反面、生の多部ちゃんを観るということで言えば、2階席ではなく、至近の最前列で観劇ができるのだから、観るのは本番で十分であり、単に生多部ちゃんを観られるからということに引っかかりもありました。

といことで、今回の『サロメ』に、どんな意図が込められているのか、またいろいろな対比の種をばらまかれていることなど、つくり手の思いに触れたことで、本番が益々楽しみになってきました。

と、前向きに考えないと、結局損をするのは自分ですからね!

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コメント
Deep Purplinさん、詳細なレポートありがとうございました。

平野版サロメを読んで、頭の中でイメージしていたのとは違う舞台になるみたいで、ますます期待度が上がりました。
真っ白だったり、水が張ってあったりっていうのは、本を読んでいてもわからないことですからね。
役者さんたちの演技、舞台装置、照明・・。
当日はそれらを存分に楽しみたいと思います。
【2012/05/27 08:35】 | gonbe5515 #mdgUF9TI | [edit]
ありがとうございます!
【2012/05/27 09:09】 | かよ #YrMu.9dc | [edit]
私やneko(赤ベコ)ちゃんも初めから居ました。
deepさんがやたらウロウロしてるのをしっかり見てます。ww
お客さんでやたらT似の女子がいたのにはツボりました。w
そして今回、2階席から観る舞台が、かなりいい感じだったので、1枚くらい買っとけばと後悔してます。
【2012/05/27 09:54】 | tdoi #- | [edit]
gonbeさん

一晩寝てみたら、あの白の舞台装置を表すのに「無機質」という単語がシックリすることに気づき、本文も少しだけ手直ししました。

その白の無機的な世界で黒ずくめの人間によって紡がれる世界に、パッと広がる赤で、サロメの「生」を対比させたいということは、何とか呑み込めました。

サロメ計画お会いできるのを楽しみにしています。しかし、仕事のペースが...尻に火がついてますw
【2012/05/27 12:36】 | Deep Purplin #- | [edit]
> ありがとうございます!

お役に立てたようでしたら幸いです。会場でお会いすることがあるようでしたら、よろしくw
【2012/05/27 12:45】 | Deep Purplin #- | [edit]
> deepさんがやたらウロウロしてるのをしっかり見てます。ww

トイレから戻ってくるときに、知っている顔は...とキョロキョロ眺め回してましたからねw

それなのに見つけられませんでしたが。

> お客さんでやたらT似の女子がいたのにはツボりました。w

気づきませんでした。さすがお目が高い!

> そして今回、2階席から観る舞台が、かなりいい感じだったので、1枚くらい買っとけばと後悔してます。

そうですね。全体を俯瞰できていい感じでした。一緒に伊藤さんから話を伺ったりしていた女性が、1枚余っていてオケピでさばけなかったので買ってもらいたいそうでした。15日の金曜日の分だったかな。初日に来られるそうですから、必要でしたらご紹介しますよw
【2012/05/27 13:00】 | Deep Purplin #- | [edit]
>deepさん

まだそこそこの券が残ってたので、買ってしまいました。ww
【2012/05/27 14:33】 | tdoi #- | [edit]
さすがtdoiさん、手抜かりありませんねw

ではまた劇場で遭遇しましたときに。
【2012/05/27 15:38】 | Deep Purplin #- | [edit]
Deep Purplinさん、お疲れ様です!

私は劇場で驚かされたいので、途中までしか読ませていただいていませんが、
「エッ、そうするの?」と思われるくらい、予想以上の演出になっていそうなので、
ますます楽しみになりました。レポートありがとうございました!


>成河さんを目当てで7回公演を観るという女性

改めて『サロメ』は多部ちゃんだけじゃなく他の素晴らしいキャストの方々と共に
作り上げる作品であると感じさせられました。この方には感服致します。
【2012/05/27 23:26】 | オタベ #- | [edit]
> 私は劇場で驚かされたいので

何事も

 「驚く」=「何らかの想定外」

ということですが、それが「思っていたのと違う」ということで戸惑うのではなく、自分の想定した枠組みを崩され、論理に縛られなくなった感情で、いろいろなものを感じてくださいというのが、つくり手の狙いなのだろうと思います。

つくり手からは、いくつか「○○と△△は対比的な存在で...」と聞きましたが、驚きによって論理から自由になった感情のアンテナで、つくり手が仕掛けていないような対比や類似、比喩を、多部ちゃんをはじめとするキャストの演技から、フワッと感じる瞬間を楽しみに観劇しようと思っています。

> この方には感服致します。

その方のお知り合いは成河さん目当てで 12回 観るという剛の者ですw ダブルスコアで負けてます...
【2012/05/28 17:58】 | Deep Purplin #- | [edit]












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