Baby, baby, never let me go...

 2014-04-30
Deep Purplinです。『わたしを離さないで』初日、観てきました。

すでに多部ブロガーの皆さんからご報告のとおり、第一幕1時間30分、休憩20分、第二幕1時間、休憩15分、第三幕50分の延べ3時間55分の作品です。

ある程度の長さがあるのではと思っていたものの、ここまでとは。帰りの電車でザッとした感想を書いてサッサとアップするつもりでしたが、疲れたのと作品も重かったのとで、簡単にまとまらずすっかり遅くなりました。

原作を手にしたのはつい一昨昨日で、1ページ目をさらっと目を通したぐらいですが、原作や映画のネタばれを含んだ紹介を見てはいるので、多少の背景、全体的に重くて暗いこと、ラストもスカッと終わるわけではなく、観る者に解釈が委ねられるぐらいのことを知っての観劇です。

明かりが落ち、舞台が始まった瞬間、感極まってウルウルッと来ました。

D列でしたが、A列がなかったので3列目になります。多部ちゃん、三浦君、木村さんは何度か舞台のギリギリ端で演技をすることもあり、間近で観ることができました。少し見上げる感じになり、舞台にはいろいろと障害物になるものもあえて設置されるので、前のほうの列は少し見にくい感じになるときもあります。
(D列はオーケストラピットを使うときは最前列なので、前に脚を伸ばすことができたのは、この長丁場ではラッキーでした。)

お話は静かに淡々と進みます。実は前の晩の睡眠時間が2時間半ほどしかなく、この舞台を観るにはかなりツラい状況でありました。照明は完全に落ちているわけではないので、腕時計に目をやりながら「あと何分持ちこたえれば休憩!」と肉体的な格闘を強いられていました。

とはいえ、舞台を観ながら感じている時間の進み具合と、時計の針の進み具合はほとんとピッタリで、また休憩までにこれぐらいの山は来そうだなという私の感じ方とエピソードの描き方はシンクロしていたので、話の進み具合は自分にとっては長すぎず短すぎずでした。

これもあちこちで書かれていることですが、設定はSFチックでも、それは登場人物たちの置かれた状況をつくり出すための装置的なもので、その設定自体を社会問題として問うているわけではありません。

そのためこのお話のあらゆる状況やエピソードが何かを象徴的に表した抽象的なものであり、物語の進行とともにSFチックな状況設定が具体的になっていっても、描いているもの自体が具体的なものに絞られていくわけではなく、舞台が象徴的に提示したものから何を感じ取るのか、3時間55分の舞台が終わった今も、知的な格闘を迫られています。

【この段落だけ少しネタばれがあります】   わざわざお金と手間ひまかけてクローンを誕生させ育ててまで、臓器提供者として存在させる最大のメリットは免疫による拒絶を避けることにあり、自分のオリジナルとなる人間に対する臓器のストックとなることだと思っていたのですが、そういう設定ではなく、またそのことがお話の中で、少しキーになるエピソードも生み出すので、SFチックな設定は、SF的な面での意味はまったくなくて、あくまでもそういう状況を生み出す設定のための設定であると、そこで納得しました。(クローンについて、もともと考え違いをしていただけかもしれませんが。)

非常に抽象的だった第一幕と第二幕のあと、第三幕で急に具体的な説明が台詞でなされてしまい、非常にバランスが悪くなったようにも感じたのですが、終わってみれば、それがむしろ絶妙なバランスであったようにも思えてきました。種明かしのようであり、種明かしではないというか、私の感覚的な問題なのでうまく表現できませんが。

形而下に提示されたヘールシャムの特殊な環境の子供たちの物語は、形而上は広く私たちの物語であり、重く考えさせるものとしてつくられています。そんな理屈っぽさに満ちたお話です。私は嫌いではありませんが、好みは分かれることと思います。それなりのお値段のチケット代の分を満足しようと思えば、そういうお話と腹をくくって観る必要はありそうです。(座席によっては、昨日のhyoutangaidenさんのように多部ちゃんのおみ足がかなり拝めるシーンもありますが。)

理屈っぽいとは書きましたが、胸を締めつけられるシーンもあり、ラスト前のクライマックスでは涙ポロポロでありました。

今日もウェブ上にある原作の感想に「宝物」という言葉があるのを見て、ハッとさせられたのですが、なぜ性欲をフィーチャーしているのか、なぜカセットテープなのかといった具合に、いろいろなエピソードやアイテムは何を意図して散りばめられているのか、あとで気づくこともいろいろとありそうなお話です。そういった空気を丁寧に伝えてくる舞台でした(その分、長いというわけです)。

ハッキリとしたお話ではない分、何度演じても完成ということはないように感じました。役者は何を感じながら、何を考えながら演じ、どんな手応えを感じたのか、それ自体もドラマであるような舞台でした。カーテンコールでの多部ちゃんの笑みと、挨拶する側を軽く示す座長としての余裕をもった仕草に大きな安堵を感じました。

多部ちゃんは演技上は引いた静かな演技が多いですが、安定感と貫禄に満ちた主役でした。蜷川さんもあまり注文をつけないというのは、むしろここから更に自由に演じてみせてくれということなのでしょう。頭でっかちに考えて演じすぎないこともよくわかった上で。それから三浦君、木村さんも良かったと思います。3人で1+1+1以上のものを創りだしていました。

観る側もなかなかシンドいのですが、1日2公演の日は5時間間隔ですから、カーテンコールを終えて1時間ほどで、夜の部という演じる側もかなりシンドい舞台です。蜷川さんがあえて演じにくくさせているという舞台装置(特に、『つばさ』で幼稚園の先生を演じた山本さんとの第二視聴覚室の場面)は、見ている側も最前列などは何か落ちてくるのではという緊張感もあったでしょうし、演じる側も足元に気をつけての演技でした。トラブルなどなく楽日、そして名古屋、大阪の公演も続けられることを祈っています。

休憩時間もたっぷりあり、目の前のコンビニに出ていくこともできますが、長丁場なので先に腹にいろいろ入れて、菓子パン、飲み物を持ちこんだのは正解でした。また18時半開始の夜の部は、埼京線からの接続もチェックしておかないと、家にたどりつく時間も相当遅くなってしまいそうです。昨日も与野本町に着く時間の数分の差で帰る時間が20分以上違ってしまい、最寄駅に着いた時には日付が変わっていました。

昼の部であっても、遠くからいらっしゃる方は与野本町の時刻表と合わせたプランが必要ですね。劇場を出れば歩いて10分かかりませんが、前のほうの席からはすぐには出られませんから、そのへんの時間も見込んでおく必要もあります。八尋計画の千秋楽などはカーテンコールも長いかもしれませんし->gonbeさん

それと何より睡眠をたっぷりとった状態でないと大変ツラいです。昨日は仕事の関係で悪条件でしたが、次回(明日)は休暇が取れるので、今晩よく寝て再挑戦です。

多部ちゃんは舞台から消えるシーンもありますが、基本的にはほとんど出っ放しですから、至福の3時間55分(マイナス休憩の30分)です!


【ここもちょっとネタばれあります】   ラストで舞台に多部ちゃんが立っていると同時に、寄宿学校時代の回想を背景で演じるシーンがあり、『南へ』の黒木華さんが蒼井さんと見まごう影武者を演じたみたいなことになるのかと思いましたが、やっぱり多部ちゃんは唯一無二であることを再確認しました。


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コメント
Deepさん、お疲れ様でした。ありがとうございました。

この丁寧な手引きがあって、多部ちゃんの新作舞台がはじまるんだという想いが強まります。

昨夜はアップされなかったので、やっぱり中途半端に書くのはやめたんだろうなって思っていました。

これで、原作を読んでる私も、明日の観劇で、しっかり腹落としができるかなと思います。

本当に、ありがとうございました。

今夜はゆっくり休んでくださいw
【2014/04/30 20:39】 | yamarine #- | [edit]
素敵な記事ありがとうございました。

実は、敢えて原作も読んでいないし、映画も観てないのですが、どんどん期待が昂まってきました。

#先日、TSUTAYAに行った折、映画がお薦めの棚にあったのでちょっと心が動いたのですが。

なんとか、大阪公演に行きたい所ですが、無理そうなので、WOWOWでの放映を期待しています。
【2014/04/30 21:33】 | marrella #QA3T5Quk | [edit]
> やっぱり中途半端に書くのはやめた

そうですねw

このところ皆さんのブログにコメントを書こうと思っても、感じたことをちょうど伝える言葉を考える余裕がなくてご無沙汰気味でしたが、久しぶりにスッキリしました。

明日(というかもう今日ですね)の再会楽しみにしています。

【2014/05/01 00:19】 | Deep Purplin #5I3Trcm2 | [edit]
> 期待が昂まってきました

コメントどうもありがとうございます。

> 敢えて原作も読んでいないし、映画も観てない

映画の予告編(前に観たかもしれませんが忘却の彼方にありました)を先ほど観たら、舞台のあのシーンだなというところがいろいろあることに気づきました。

映画だとロケや自動車や外部の大人やらがリアルに出てきますが、そこらへんの再現に制約がある舞台のほうが想像力をかき立てさせるように感じました。

> WOWOWでの放映を期待

WOWOWは中日頃の1日2公演ある日を録ることが多いようです。そういう日にも観に行くので、カメラが入っているようでしたら報告します。

########

marrellaさんのブログで『僕のいた時間』の初回の感想にお書きになっていたことと関連して...

『わたしを離さないで』からはいろいろなことを感じとることができますが、やれコミュニケーション力だ、社会人何とか力だ、TOEIC何点だと、秀でていないと就職というパスポートを得られないかのように煽られている若者たちへ、そういった物差しを意識して全力を尽くすことと、そんな物差しが普遍的で絶対的な揺るぎのないものと信じ込むことは別物だとメッセージを送っているようにとることができるようにも感じました。

【2014/05/01 01:15】 | Deep Purplin #5I3Trcm2 | [edit]
>与野本町の時刻表

入口でくれるチラシの束に時刻表のコピーが入っています。私は家に帰ってから気づきましたが(笑)
【2014/05/01 04:29】 | hyoutangaiden #- | [edit]
>そのへんの時間も見込んでおく必要もあります。
>八尋計画の千秋楽などはカーテンコールも長いかもしれませんし
気にとめていただきありがとうございます。
3時間55分というのを知り、一昨日みどりの窓口へ慌てて走りました。
与野本町を18:01に出て富山に21:48着と18:36に出て富山着が23:26着のふたつあり、迷いましたが18:36のほうを買いました。
それでも13:30開演、4時間の公演、カーテンコール10分、外に出るまで15分と考えると充分な時間があるとはとても言えませんが。
劇場から駅までダッシュする姿が目に浮かびます。

みなさんとは、休憩時間での意見交換と、それぞれが地元に戻ったあとの感想のやりとりになるかもしれません。
ゆっくり出来なくて申し訳ないです。
【2014/05/01 18:49】 | gonbe5515 #- | [edit]
>時刻表のコピーが入っています

参考になりました。
ありがとうございます。
【2014/05/02 01:21】 | yamarine #- | [edit]












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